本稿では、多数のパラメータからなる表現を探索するための方法として、2次元の網羅的提示を提案し、実験から得られたその特性を報告する。著者はこれまで、ユーザが自身の発想外の案を得ることを目的として、表現の取り得る状態を網羅的に作成、提示する網羅的提示を提案してきた。案の作成は、案を成すパラメータ群の値を均等にサンプリングし、それら全ての組み合わせに基づいて行う。一方で網羅的提示には、パラメータの数が増えるほどに作成される案の数が多くなり、有限サイズのディスプレイに表示したときに視認性が損なわれるという課題があった。本稿では視認性を損なわない網羅的提示として、多数あるパラメータの中から2つを用いた2次元の網羅的提示を、パラメータを変えて繰り返し行う手法を検討する。3種のインタフェースでカメラアングルを探索する実験の結果、2次元の網羅的提示によって視認性は改善されるが、全体を俯瞰する力は弱くなることが明らかになった。

	研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション（HCI）

２次元の網羅的提示による視覚表現の探索とその特性

空間内にあるユーザインタフェース（UI）に関して，ユーザがそのウィンドウの正面にいない場合にどのように操作性が変化するかは，VR空間内や立体的な操作空間において重要な問題である．これまで正面の場合の操作性に関する研究は行われてきたが，角度のついた位置にいる場合の研究はほとんど行われていない．そこで本稿では，VR空間内においてウィンドウの正面にユーザがいない場合の円形経路通過タスク（ステアリングタスク）に着目し，ユーザが角度のついた位置にいる場合についての難易度と操作時間の関係を調査した．実験では，VR空間内に配置された円形の経路に対してユーザが4種類の角度からステアリングタスクを行った．タスクの操作時間とユーザに対する経路の角度を分析した結果，見かけの経路の幅変化を考慮した難易度指標が実測された操作時間に対して高いモデル適合度を示すことが分かった．

研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション（HCI）

ウィンドウ正面にユーザがいない場合のステアリング時間のモデル化

光学レンズ食品はレンズ形状を持つゼリー部分と下地の画像パターンを組み合わせることで，視点によって見え方が変化する効果を発揮する食品である.これまでの光学レンズ食品では，食器に印刷された画像パターンを用いており，ゼリーを持ち上げると同時に視覚効果が失われるという制約があった.そこで，本稿では転写シートを用いた食品への印刷手法を光学レンズ食品に適用し，画像パターンごと食べることができる光学レンズ食品の実現に取り組んだ.本手法を用いた光学レンズ食品の制作プロセスについて述べるとともに，画像パターンと一体化した光学レンズ食品の制作事例を紹介する.

第32回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2024)予稿集 

Opticuisine：光学レンズ食品のための画像印刷手法

既存の味ディスプレイでは主として，味溶液混合式が採用されてきた．しかし腐敗等のリスクから味溶液の長期保存が困難であった．また，ポンプの詰まりや，添加された水分による湿潤化・食感損失も指摘されている．これらの問題を解決するため，本稿では粉末混合式の味ディスプレイを提案する．まず，スクリューを用いて粉詰まりを防ぎ，粉末の安定した出力を実現した．そしてロードセルで質量を計測し，目標値に近づくほどスクリューの回転速度や蓋の開閉を自動調整することで
精密な計量と混合を実現した．

第32回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2024)予稿集

PTTV：粉末混合式の味ディスプレイ

本稿では，大規模言語モデルを用いて段階的な要約を生成し，スクロール速度に応じて適切な詳細度で情報を提示する手法を提案する．具体的には，スクロールが速いと簡略な要約，遅いと詳細な要約を提示する．スクロールのみで拾い読みと精読を切り替えることができ，高速スクロール時でも簡略な要約から文書の内容把握が可能である．

スクロール速度に応じた段階的要約による文書提示手法の提案

本稿は「味覚のパーソナルメディア」を実現することを目的とし，カトラリー型味覚提示デバイスTTTV4のハードウェアとソフトウェアを試作した．各個人が使用することで，各個人が求める味を楽しむことができ，味覚コンテンツがパーソナライズされる．TTTV4は単なる小型化の実現だけでなく，対象ユーザを料理を「作る人」から「食べる人」まで拡張した．これに伴い，要求される多様な速度と精度に基づいたハードウェアの議論を行った．また，多様な対象ユーザでも扱えるインタフェースに関する議論を行うため，Direct Manipulation とInterface Agents に基づく2つのユーザインタフェースを試作した．本稿における考察から，パーソナルメディアを実現するには，ユーザに合わせてインタフェースもパーソナライズすべきであることが示唆された．

TTTV4：一口ごとに味を提示する味覚のパーソナルメディア 

This study presents food products whose appearance, such as color and image, changes depending on the viewpoint. This was achieved by fabricating jelly with structures of convex lenses, which is arranged in a two-dimensional plane using 3D-printed molds. This enables interactive gastronomic experiences with the presentation from multiple viewpoints. In this study, we developed a system that supports the design and fabrication workflow for edible lens arrays. Using our system, users can design arbitrary lens array shapes and simulate their appearance based on the refractive index of the jelly material. The system then outputs a 3D mold model for casting the jelly lenses. In addition, we created several dishes that exhibit viewpoint-dependent changes in appearance, demonstrating their potential for creating interactive gastronomic experiences.

UIST Adjunct '24: Adjunct Proceedings of the 37th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology Article

Edible Lens Array: Dishes with lens-shaped jellies that change their appearance depending on the viewpoint

Previous studies on the Finger-Fitts law (FFitts law) are lacking in sufficient experiments to verify its inherent potential. Since the FFitts law is originally a modified version of the effective width method to normalize speed-accuracy biases, the model fit would improve if multiple biases were mixed together and the throughputs would be more stable than using the nominal target width. In this study, we conduct an experiment in which participants tap 1D-bar and 2D-circular targets under three subjective biases: balancing the speed and accuracy, emphasizing speed, and emphasizing accuracy when they perform the tasks. The results showed that applying the effective width to Ko et al.'s refined FFitts law, which represents the touch ambiguity with a free parameter, was the most successful in normalizing biases. Reanalyzing another dataset on ray-casting pointing also led to the same conclusion. We thus recommend using Ko et al.'s model with effective width when researchers compare several experimental conditions such as devices and user groups.

Proceedings of the ACM on Human-Computer Interaction, Volume 8, Issue MHCI

Verifying Finger-Fitts Models for Normalizing Subjective Speed-Accuracy Biases

凸レンズを二次元平面上に配置したレンズアレイでは、レンチキュラレンズと比べて視点方向の制約が無く、自由な視点での絵柄変化が可能である。本論文では3Dプリンタを用いた型成形によって二次元可食レンチキュラレンズを作製するシステムを提案し、その設計・シミュレーションに基づいたゼリー製レンズの作製を実現した。さらに、視点によって見た目が変化する料理の試作を通じてインタラクティブな食体験の可能性を示した。

エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2024論文集

多視点からの見た目が変化する料理のための二次元可食レンチキュラレンズデザインシステム

本稿では，脂質ゼロでありながら油として感じられる液体を生成する装置の開発について述べる. オリーブオイルを題材とし，味・香り・テクスチャの観点において，本物と同等と感じられるパラメータを探求し，溶液の混合によりそれを実現した．また，多様な油を生成できる装置の開発を目指し，TTTV3を用いて溶液を出力した．このようにして，思う存分油の味を堪能しながらも，肥満のリスクを回避することが可能であると考えられる.

Virtual Oil Generator: 多様な油を脂質ゼロで生成する装置実現に向けて

本稿では、学習や運動など、単調でありながら継続を必要とする活動において、ユーザの継続意欲を向上させる激励文の生成手法について検討する。
従来は達成状況などに応じて、限られたパターンからの提示が多かったが、本稿では生成AIを使用し、そのユーザの活動時間、苦労を要した箇所、こだわった箇所など、さまざまな文脈に鑑みた激励文を生成するシステムを試作した。さらに、この機能を英語日記の添削システムに導入することで、日々の執筆の継続を向上させることを試みた。

激励くん: 継続意欲を向上させる激励文の生成システム

本稿では，脂質・糖類ゼロでありながら多様なクリームの食感と味を再現する「Virtual Cream Generator」の開発への取り組みについて紹介する．味覚ディスプレイTTTV3の技術を基盤とし，ゼラチンとサイリウム（増粘剤）の量および撹拌時間を最適化することで，カスタードクリームの食感と口当たりの再現を試みた．レシピ探索の結果，最適なレシピが示されたほか，粘弾性評価により，この配合が実際のカスタードクリームと類似した特性を示すことを確認した．本技術は，糖尿病や肥満のリスクを軽減しつつ甘いクリームを楽しむ可能性を提供する．今後は，人工甘味料の選定や香料の改良による再現性の向上，TTTV3と撹拌装置の組み合わせによる自動化を目指す．

Virtual Cream Generator :多様なクリームを脂質・糖類ゼロで生成する装置に向けて

本稿ではSSVEP(Steady State Visual Evoked Potential)刺激を提示・停止したときの誘発度合いの立ち上がりや減衰がどのようになっているかを調査した．実験では刺激の提示と停止を繰り返すパターンを実験参加者に見せ，その波形をもとに誘発度合いの増加や減少を解析した．これによりSSVEPベースのBCIにおけるインタフェースにおいて，誘発の推定によるより高速なBCIシステムの実現可能性が示唆された．

BCIにおける刺激開始・停止時のSSVEP誘発応答の時間解析

	本論文では、登場人物や鑑賞者の心の動きを表す複数のエンベロープを操作することで、ストーリーの構築と編集を可能にするシステム「TaleShaper」を提案する。本システムでは、大規模言語モデルを用いてストーリーのエンベロープを生成する。さらに、エンベロープを操作することで、LLMを通して既存のストーリーを生成・書き換えることができる。ユーザは、細かなテキストの編集を行うことなく、柔軟にストーリー全体を形作ることが可能である。

 TaleShaper:複数のエンベロープで形作るストーリー創作システム

嗅覚には，外気から鼻腔を通る「オルソネーザル経路」と，口から鼻へ抜ける「レトロネーザル経 路」の 2 つの経路があることが知られている．現状，多くの嗅覚ディスプレイはオルソネーザルアロマに特化 しており，レトロネーザルアロマの提示システムはほとんど開発されていない．そこで本稿では，口内に直接 香りを放出するレトロネーザルアロマ提示システムを試作した．口内に配置した超音波噴霧器によって香り溶 液を微細な霧状に噴霧し，レトロネーザルアロマを実現する．

VR 学研報 日本バーチャルリアリティ学会研究報告 香り・味と生体情報研究会

レトロネーザルアロマ提示システムの試作

In Fitts’ law studies to investigate pointing, throughput is used to characterize the performance of input devices and users, which is claimed to be independent of task difficulty or the user’s subjective speed-accuracy bias. While throughput has been recognized as a useful metric for target-pointing tasks, the corresponding formulation for path-steering tasks and its evaluation have not been thoroughly examined in the past. In this paper, we conducted three experiments using linear, circular, and sine-wave path shapes to propose and investigate a novel formulation for the effective parameters and the throughput of steering tasks. Our results show that the effective width substantially improves the fit to data with mixed speed-accuracy biases for all task shapes. Effective width also smoothed out the throughput across all biases, while the usefulness of the effective amplitude depended on the task shape. Our study thus advances the understanding of user performance in trajectory-based tasks.

CHI '24: Proceedings of the CHI Conference on Human Factors in Computing Systems

Better Definition and Calculation of Throughput and Effective Parameters for Steering to Account for Subjective Speed-accuracy Tradeoffs

In this study, we propose a novel human-like memory architecture designed for enhancing the cognitive abilities of large language model (LLM)-based dialogue agents. Our proposed architecture enables agents to autonomously recall memories necessary for response generation, effectively addressing a limitation in the temporal cognition of LLMs. We adopt the human memory cue recall as a trigger for accurate and efficient memory recall. Moreover, we developed a mathematical model that dynamically quantifies memory consolidation, considering factors such as contextual relevance, elapsed time, and recall frequency. The agent stores memories retrieved from the user’s interaction history in a database that encapsulates each memory’s content and temporal context. Thus, this strategic storage allows agents to recall specific memories and understand their significance to the user in a temporal context, similar to how humans recognize and recall past experiences.

CHI EA '24: Extended Abstracts of the 2024 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems

"My agent understands me better": Integrating Dynamic Human-like Memory Recall and Consolidation in LLM-Based Agents

情報処理学会論文誌

ポインティングにおけるカーソルを遮蔽するノッチに関する調査

Text-to-Image モデルで生成した画像を意図した通りの画像となるよう追い込むことは難しい．生成される画像をテキストのみで制御することが困難なためである．入力するテキストは単語の順序や修飾関係を明確にしたものでなければならず，後からの修正も容易ではない．また，生成された画像をテキストのみで編集する手法が研究されているが，スクリプト言語でのコーディングが必要となる．本研究はパラメータの調整や特定の部分のみを編集することによってユーザ自らが求める表現へと追い込めるようにすることを目的とし，テキストボックスとスライダからなるノードの操作によって画像の生成と編集を行うシステムを提案する．単語の入れ替えや修飾関係の指定，パラメータの調整といった作業はテキストボックスやコードエディタで行うのではなく，それに適したインタフェースで行うべきだと考えている．ノードベースのシステムとすることで単語同士の関係を指定することや，編集したい部分のみ操作することが可能になる．また，各ノードに備えたスライダ操作によってインタラクティブにパラメータの調整ができる．さらに，作例制作を通した提案システムの評価を行った．提案システムによって生成済みの画像を追い込むことでユーザが求める表現を持つ画像を制作できるようになることを示した．

研究報告エンタテインメントコンピューティング（EC）

ノードとスライダで細部調整を追い込む画像生成システムの提案と評価

アイデアの生成には多大な労力を要する．近年では LLM を用いてアイデア生成に係る負荷を軽減するアプローチが広く取られているが，こちらもプロンプトの工夫などで労力を要するものである．本研究では，質の高いアイデアを楽に得ることを目的として，アイデア生成システム『Agent Agora』を提案する．固有のロールを持つ LLM 搭載エージェントを集め，自律的にブレインストーミングを行わせることでアイデアを生成する．ユーザは頃合いを見て状況を確認し，より議論に貢献しそうなエージェントを選定する．選定と放置を繰り返すことで，ユーザは自ら発想することなく多様なアイデアを得ることができる．さらに，実験にて得られた利用例をもとに，システムおよび生成されたアイデアの有用性を評価・考察する．

Agent Agora: エージェントの選定と放置によるアイデア生成システムの提案と評価

著者はこれまで，食品の賞味期限延長や食品ロス削減に寄与することを目標に，食品の味を時間軸で変化させる味のタイムマシン技術を開発してきた．味の経時変化，特に熟成過程を数式モデル化し，添加物の量に換算することで，食品の味の時間変化を操ることができる．本稿ではスプーン型装置「Chronospoon」を用い，一定の比率で混合された液体を使用し，単一のタンクのみで味の順行・逆行変化を可能にした．これにより従来の調味家電よりも小型化を実現し，実用可能な調味食器としての開発に成功した．

インタラクション2024論文集

Chronospoon:時を操る調味食器

人類は映像技術が発明されて以来，様々な映像を記録してきた．近年，味覚メディアの発達により，映像とともに味を記録し再生することが可能になったが，これまで記録されてきた映像に対して味を付与することはできない．本稿では，白黒映像をカラー化する技術のように，味が記録されていない映像に対しても，味を推定し付与するシステムを提案する．味はGPT4-Vision により映像の全シーンに対して推定される．プロンプトでは，飲食物の名前，材料とその量をまず推測し，その後に味を推定するように指示しており，段階的な推論によって精度の高い推定が可能である．また，推定された味データは映像の各ピクセルに対応する形でファイルに記録される．視聴者は，映像上の飲食物を指定して，対応する味を出力し味わうことができる．本システムによって，既存の映像メディアを「味わえる映像」にすることができる．

TasteColorizer: 既存の映像メディアを「味わえる映像」にするシステム

4ストローク運動錯視は，輝度を変化させた静止画の連続によって，一方向に無限に移動しているように知覚させる運動錯視である．我々の研究により，8.57-15.0 Hzでフレームが更新される4ストローク運動錯視を注視した際にSSVEPが誘発されることが明らかとなり，SSVEPベースBCIに対する4ストローク運動錯視を用いたUIの有用性が示された．一方で，明滅が速すぎて錯視が生起されないという意見が得られたため，周波数帯を見直す必要がある．そこで，錯視が生起性が保証された上で改めてUIの有用性を示すことを目的とし，周波数を4.29-7.50 Hzに半減させたフリッカ刺激を用いて実験を行った．その結果，識別手法としてIT-CCAを導入することで，錯視が生起がしやすい周波数帯においても識別精度が低下せず，既存のフリッカ刺激に匹敵する高い精度を示した．さらにアンケートの結果から，周波数を下げることで錯視が起こりやすくなる傾向が見られた．また，4ストローク運動錯視を注視する際，SSVEPとSSMVEPを同時に誘発している可能性が示唆されたが，IT-CCAは2種のVEPの干渉による影響を受けなかった．そのため，IT-CCAを識別手法として用いることで，4ストローク運動錯視を用いたUIに対し，高い操作性と錯視の生起の両立を可能にすることが期待される．

錯視が生起する周波数帯の4ストローク運動錯視を用いたUIへのIT-CCAを活用したSSVEPベースBCIの利用検討

新しいポインティング手法を評価するとき，実験では「できるだけ速く正確に」タスクを行うよう教 示するのが一般的である．しかし，速さと正確さのバランスは参加者ごとに異なり，これが結論に影響を 及ぼす可能性がある．本稿では，3 つの主観的バイアス（速さ重視，ニュートラル，正確さ重視）が，既存 のポインティング手法である Bubble Cursor と Bayesian Touch Criterion の評価結果に与える影響を検証 した．結果，Bubble Cursor は全バイアス条件でベースライン手法の性能を上回ったが，Bayesian Touch Criterion は，より単純なターゲット予測手法の性能を下回り，元の論文とは異なる結果となった．このよ うに，複数のバイアスを調査することで，手法の特性をより正確に議論し，一般化可能性の高い結論を得 ることができる．本稿では複数の主観的なバイアスを実験条件に加えることが望ましいと提言する．

速さと正確さへの主観的なバイアスがポインティング手法評価の一般化可能性に与える影響

ウェブカメラやマイクなどによって，カーソルの一部や全体が遮蔽されることがある．著者らは以前，ターゲットを挟む遮蔽物が操作時間を増加させることを示した．本稿では，遮蔽物の位置がポインティングに与える影響を調査した．結果，遮蔽物がターゲット間にある場合，ターゲット間の外側にある場合よりも操作時間を増加させる影響が大きかった．位置によって操作の戦略は異なったものの，どちらの場合でも遮蔽物の幅が大きいほど，遮蔽物とターゲットの間隔が小さいほど，操作時間が増加した．また，著者らが以前提案した操作時間予測モデルがどちらの場合にも応用できることを示した．

遮蔽物の位置がポインティングに与える影響

フリッカ刺激をディスプレイ上で提示する際，リフレッシュレートの制約により，提示可能な周波数が制限されてしまう．そのため多くの研究では何フレームごとに輝度を反転させるかを重視した周波数のみを用いている．しかし，提示できる周波数の数には限界があり，なおかつ一般的なフリッカ刺激の倍の描画更新を要する 4 ストローク運動錯視においては致命的な制約になりうる．本研究ではこの問題を解決するため，描画の切替時にアルファブレンドを用い，擬似的な周波数の再現を試みた．この手法が成功すれば，リフレッシュレートの制約によらず，任意の周波数での効果を再現できることが期待される．そこで，擬似的に再現した周波数をもつ 4 ストローク運動錯視を複数提示し，さらにフレームレートを独立変数に加えて正しく識別できるのか調査を行った．その結果，周波数を疑似再現しても識別が可能であることが示された．特に IT-CCA を識別手法に用いることで，識別可能な周波数帯が拡張され，なおかつ識別精度がリフレッシュレートの低下による影響を受けないことが示唆された．

周波数を疑似再現した4ストローク運動錯視に対するSSVEPベースBCIの識別精度

人間の創造的活動において，多数の案を出してその中から最良のものを選択することは多くある．一方で，人間一人の発想には限界と偏りがあることも考えられる．それをコンピュータによる案の網羅的提示によって補うことで，より幅広い探索と良い案の発見が期待される．本稿では，写真撮影時のカメラアングル決定において，網羅的提示が人間の探索行為に与える影響について議論する．

カメラアングルの網羅的提示が探索行為に与える影響

アイコンタクトは信頼の形成や不安の低減など会話で重要な役割をもつ．だが，ビデオチャットでは互いにアイコンタクトを取ることが困難である．この問題に対処するために，視線補正やカメラ位置を移動させることによってアイコンタクトを可能にする手法が研究されている．しかし，既存研究では視線補正による違和感や，大掛かりなシステムの持ち運びの困難さが問題である．本研究では，ディスプレイに埋め込まれたパンチホールカメラか，小型USBカメラとPCを使用するシステムを提案する．相手の目を検出し，カメラと相手の目の位置を常に重ねることができるシステムを作成した．カメラを瞳孔と見立てることによって，カメラを意識することなくビデオチャットでアイコンタクトを可能にする．

第31回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2023)予稿集

カメラ目点 : カメラを目に見立てたビデオチャットシステムの提案

本稿では，LLMベースのエージェントに人間のような時間感覚付与を行う手法の中でも，情報の関連度，経過時間，想起頻度を総合的に考慮した付与を試みた．さらに「タイムライン」構造のデータベースを採用し，より効率的な情報検索を可能にした．これにより，エージェントはユーザとの過去の対話や行動を基に，何を優先的に提供すべきかを判断した回答を行える．具体的に，人間の「エピソード記憶」を基に，会話履歴から日時，キーワード及びトピックなどの要素を含めた情報群を「イベント」として抽出し保存した．これにより，エージェントがユーザとの会話において，「記憶」ーすなわちデータベースから情報を参照する際に，ベクトル検索により類似度の上位イベントを検出することができる．さらに，各イベントにおけるクエリ頻度と経過時間により計算された情報としての「重要度」が最も高いイベントを「想起」する機能を実装した．これにより，記憶が時間経過とと　もに薄れたり，また繰り返し想起することで定着したりする過程を再現することができる．このように，外部から人間特有の記憶プロセスを付与されたエージェントは，ユーザが本当に求めている情報の提供や，人間なら当然できるはずの振る舞いができる．

 第31回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2023)予稿集

Timeline Memory: 記憶の重要度評価による大規模言語モデルへの時間感覚付与

本稿第二著者は，食品の時系列変化を味センサで測定し，液体を噴霧することによって時間の変化を再現する方法について検討した．たとえばバナナやトマト，カレーの味を熟成させたり，逆に熟成したものの味をもとに戻したりする試みも行っている．この知見を利用すれば，味覚において「時間を自在に操るような体験」が提供可能であると考えられる．本稿では，この体験が行えるシステムを試作した．提案システムTaste-Time Travellerに食品を入れ，ダイヤルを回すと，指定した時間が経過した後の味や，指定した時間だけ前の味に変えられる．それだけでなく，半透明なスクリーン上で視覚的な変化も行う（たとえばバナナが青くなったり黒くなったりする）ことで，時間旅行者が味を操っているかのような感覚を生み出すことを試みた．

Taste-Time Traveller：食品の時間を操る味覚AR装置

本研究では，ボトル装着型のポンプ混合式調味家電TTTVinを設計・実装した．TTTVinは，ボトルに装着し使用する仕様であり，ボトルからワインを注ぐ動作を維持しながらベースのワインに味溶液を混合し，ターゲットのワインの味を再現することを目指したシステムである．注ぐワインに対してのみ味溶液を混合するため，注ぐ度にワインの味を切り替えて楽しむことを可能にする．実用例として，白ワインから赤ワインの味を表現するための新たな再現と，安価なワインから高価なワインの味を表現するための再現を行った．白ワインから赤ワインへの再現では，中和剤の変更やうま味成分の添加を行った．安価なワインから高価なワインの再現では，安価なワインの方が高価なワインよりも酸味が弱い傾向があるため，酒石酸ナトリウムとリンゴ酸を加えることで酸味を増強する．また，味のまとまりを再現するために甘味となるフルクトースを加えた．

ボトル装着型調味家電TTTVinを用いたワインの味再現

レンチキュラレンズは見る角度によって色が変化する光学素子として広く知られている．これを可食素材で実現することによって，料理の見た目を大きく変化させる新たな食体験が実現される可能性がある．本稿では可食レンチキュラレンズの設計から作製までの一連のワークフローを支援するシステムを提案する．提案システムはレンチキュラレンズのデザインを行うソフトウェアと作製を行うハードウェアから構成される．ユーザはソフトウェアによるシミュレーションを通じて，レンチキュラレンズの視覚効果を設計し，提案システムのハードウェアを用いて切断成形手法によるレンズ作製を行うことができる．また，本稿では作製したレンズをシミュレーションされたものと比較し，その精度の高さや時間的コストの低さを示した．

可食レンチキュラレンズ デザインシステムの提案

もし我々人間に「時間を自在に操る能力」があれば，熟成年数が浅いウィスキーの時間を10年早送りしたり，黒く熟れたバナナの時間を数日巻き戻したりして食しているだろう．本稿では「味のタイムマシン」の実現を目指す． 食品の味変化を測定・モデル化し，味物質や中和剤を添加して時間の順行・逆行両方向での味変化を可能にした．たとえば未熟なトマトや作りたてのカレーの味を数日後の味に変え，熟れたトマトや一晩おいたカレーの味を，以前の味に戻せるようになった．

Taste Time Machine : 飲食物を過去や未来の味に変える装置の実現に向けて

デスクトップ環境では，2 次元平面を安定的に滑ることによって操作するマウスが主流な入力デバ イスであり，非常に細かな操作が可能である．また，ボタンを押下する場合も安定した平面である机に向 かって押下するため，安定的である．一方，VR や AR などの 3 次元仮想環境においてポインティングで ターゲットを選択する場合，コントローラや手といった 3 次元空間を自由に動くことができる入力手法に よって選択される．そのため，ターゲットから外れることなく空中でコントローラのボタンを押下したり， 指で選択ジェスチャを行ったりするためには，注意深く腕を固定しながら選択動作を行う必要があり容易で はない．そこで，物理的な引っ掛かりによって安定してターゲットを選択できる円形メニュー，Bump Pie Menu を提案する．マウス操作における画面角にカーソルをぶつけて高速選択できるという利点を 3 次元に 拡張し，カーソルを引っ掛けて操作することでより安定的にターゲットを選択できる．ユーザ実験では，既 存の円形メニューである Pie Menu よりも低いエラー率を示し，カーソルを引っ掛けることで正確に選択で きる可能性が示唆された．

Bump Pie Menu : VR 環境で「レイを引っ掛けて」ターゲットを選択する円形メニュー

Text-to-Image モデルでの画像生成では，ユーザはテキストのみで生成したい画像を指示する．生 成された画像の中には，細部の編集により表現を追い込みたいものがある．だが，これまでに提案されてき た画像生成のための編集手法では，表現を追い込む際に必要なインタフェースはあまり提供されていない． また，ノード内のパラメータを調整することで画像を生成するビジュアルプログラミングのようなシステム が多く開発されているが，生成した画像を編集できるものは少ない．本稿の目的は画像の生成と編集が一体 化したシステムによって，ユーザ自らが求める表現を追求できるようにすることである．そこで，本稿では テキストボックスとスライダからなるノードの組み合わせでプロンプトを構築し，テキスト変更やスライダ 調整によって画像の生成と編集を行う画像生成システムを提案する．ユーザはテキストの操作で画像内オ ブジェクトの部分的な入れ替え，スライダの操作で特定のオブジェクトの影響力を微調整するといった「詰 める」作業が可能となる．提案システムでの「詰める」作業によって，ユーザが求める表現に到達できる．

ノードとスライダで細部調整を追い込む画像生成システム

視力が低下すると，ターゲットとカーソルの位置や輪郭を正確に認識できないため，ポインティングの操作時間やエラー率が増加する可能性がある．著者らの先行研究では，視力の変化を画面のぼかしで代替した実験において，ぼかし度が大きいほど操作時間やエラー率が増加することを示した．そして，ぼかし度を考慮した操作時間の予測モデルを提案したが，その検証は行っていなかった．本稿では，そのモデルの検証を行うとともに，モデルを用いてターゲットサイズを補正することの有用性を調査する．結果，モデルは参加者ごとに高い適合度を示し，モデルを用いてターゲットサイズを補正することで操作時間に対するぼかし度の影響が減少した．これにより，モデルがターゲットサイズを補正するために有用であると示された．また，このモデルを，ユーザの視力に応じてUIを補正するツールに利用できる可能性が示唆された．

ポインティングにおける低視力者のためのターゲットサイズ補正

ディスプレイと重なって配置されるウェブカメラやマイクなどは，ディスプレイの一部を遮蔽する．この遮蔽された領域にカーソルが進入した場合，カーソルの一部や全体も遮蔽してしまう．本稿では，カーソルの遮蔽がポインティングに与える影響を調査した．結果，遮蔽物とターゲットの間隔が近いほど，遮蔽物の幅が大きいほど，操作時間とその標準偏差が増加した．この 2 つの条件が操作時間に対して相互に影響することが示され，その影響を考慮した操作時間予測モデルを提案した．

カーソルの遮蔽の影響を考慮したポインティングのモデル化

We study taste reproduction using taste sensors, with a particular emphasis on accurately measuring and reproducing the taste of garlic while reducing the associated bad breath. We measured and reproduced the taste of garlic using a combination of odorless substances. We also developed a fork integrated with a mechanism for releasing the aroma of allicin to provide controlled exposure to the nose for a complete eating experience. Through our experiments, we successfully achieved identical taste and smell experiences, effectively eliminating the occurrence of bad breath. To validate our findings, participants tasted a dish of spaghetti and reported that the culinary experience was very similar to that of normal garlic-infused dishes, with no detectable bad breath.

The 36th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST ’23 Adjunct)

How To Eat Garlic Without Causing Bad Breath

This study focused on an optimal tableware design using electro-taste technology to enhance saltiness. Based on various design and usability considerations, we created prototypes and conducted interviews with users to obtain suggestions for the optimal design, and identified the requirements for designing electro-taste tableware.

Electric Salt: Tableware Design for Enhancing Taste of Low-Salt Foods

Lenticular lenses are widely known as optical elements that change color depending on the viewing angle. By realizing this phenomenon in edible materials, it is possible to create a new gastronomic experience that significantly changes the appearance of food. In this study, we propose a system that supports the workflow from the design to the fabrication of edible lenticular lenses. The proposed system consists of lenticular lens design software and fabrication hardware. Users can design a visual effect of lenticular lenses by software simulation and fabricate the lenses by the knife cutting method using the hardware of the proposed system. In this study, the fabricated lenses were compared with the rendered ones. Furthermore, we confirm that the fabrication of the lenses is highly accurate and requires a short time.

Edible Lenticular Lens Design System

本稿で設計・実装したポンプ混合式調味家電 TTTV3 は様々な味の溶液を加えて飲食物(梅干し,チョコレート,ワインなど)の産地による違いも表現することを目指したシステムである.従来の噴霧混合式ではなく,ポンプを使用し 20 種類の溶液を 0.02ml 単位で混合できる.中和剤や味覚修飾物質の使用やマスキング効果によって「味の減算」を実現したほか,一味に対して複数の溶液を用いて風味を近づけるなど精細な調整が行えるようになった.

第28回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集

ポンプ混合式調味家電TTTV3(Transform The Taste and reproduce Varieties)の設計と実装

本稿では，TTTV3を用いて， ベースとなるワインに味溶液を混合し，ターゲットとなるワインの味を表現する手法について述べる．白ワインをベースとし，タンニン酸で渋味を加えることで赤ワインの味も表現可能である．また，ターゲットよりベースの酸味が強 く，酸味のみを薄める必要がある 場合でも，アルカリ性である炭酸水素ナトリウムによる中和や，スクロースによる甘味添加に伴うマスキングを利用することで味再現ができることを実例で示した．

エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集

TTTV3を用いたワインの味表現

TTTV3は，20種の溶液を 0.02ml単位で混合し加えることで飲食物の味を変える調味家電である．一味に対して複数の溶液を用いて風味を近づけることができ，産地による違いも再現できる．アルカリ性物質の添加による中和，味覚修飾物質の活用，他の味によるマスキング効果を利用することで元の食品の味よりも特定の味を薄く感じさせる「味の減算」も行える．料理名をマイクで入力したり，画像をウェブカメラで見せたりすると， LLMによって味を推定して出力することが可能である．また，LLMと対話して味を調整することもでき，膨大な味空間のなかで未知の味を探索することもできる．

エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集

TTTV3 (Transform The Taste and reproduce Varieties): 産地や品種の違いも再現する調味機構と LLM による味覚表現

本稿では，様々なロールのLLM 搭載エージェントを集めて，放置することでアイデアを得るシステムを提案する．本システムは広場を模している．ユーザはエージェントを広場に集めた後，テーマを書き込んで放置する．すると，エージェント達は各々のロールに沿って勝手にブレインストーミングを行う．ユーザは頃合いを見て状況を確認し，良いアイデアがあれば採用する．また，良いアイデアが無ければ議論に貢献していないエージェントを追い出し，貢献しそうなエージェントを新たに引き入れて再び放置する．このようにマネジメントと放置を繰り返すことで，自ら発想することなく質の高いアイデアを得ることを目指す．

Agent Agora：異なるロールのエージェントを集めて放置することでアイデアを得るシステム

本稿で提案するシステムは，透過液晶ディスプレイにオブジェクトの像を表示し，その奥に配置されたタッチパネルディスプレイにオブジェクトの影を仮想的に表示させる構造となっている．ユーザは，これらのディスプレイの間に手を挿入し，指先で仮想的な影に触れる．この影をタッチ操作することで影に連動してオブジェクトが変形する．これにより，モデルの形状をデザインする3DCADシステムとして利用できる．

Shadow Chamber: オブジェクトの像とその影の間に手を挿入して操作する3DCADシステム

概要：本稿では，チョコレートの味を異なる産地の味に変化させる手法について述べる．味センサで 2 種
の味の差を測定し，それに基づき味溶液を混合する手法で味を変化させる．また，1 つの味に対して複数
の溶液を用いて風味を近づけ，味の加算とともに，マスキング効果による味の減算を行うことで，精細な
表現を行えるようになった．本稿では安価なコートジボワール産カカオドリンクの味を，高価で希少なペ
ルー産カカオによる味に変化させることに成功し，専門家からも高い評価を得た．

産地の異なるカカオの味の違いを 定量化し純物質で再現する手法

楽曲の拍子変換は，聞き慣れた曲に新鮮さを与えるアレンジ方法の1 つである．しかし，拍子を変えたアレンジのバリエーションは多く存在するのに対し，人間が思いつけるアレンジは少ない．本稿では，楽曲の4 拍子から3 拍子への変換案をシステムが網羅的に提示することで，人間が見落としていたアレンジを拾い上げることができることを示す．さらに，提示したアレンジの中には人間が思いつくより良いもの，あるいは人間を触発し，より良いアレンジを想起させるものが含まれる可能性がある．

楽曲の拍子変換のための網羅的な探索システムの評価

ソフトウェアの使い方はユーザごとに様々であり状況によっても変化するため，それに応じて GUI も柔軟である必要があると考えられる．そこで，ソフトウェアが「気遣い」としてユーザの状況に合わせて主体的に GUI を変更する環境が必要であると考えた．本稿では，ユーザがソフトウェアを使いながらその GUI に対しての不満を声や文字で伝えることで，GUI をその場で自動修正するシステムを試作した．例えば，機能が選びづらいと伝えれば，各機能のボタンや選択リストを大きくする，機能が分かりづらいと伝えれば機能の説明を加えるなどである．システムの実装においては GPT-4 を用い，不満の理解，解決法の立案，ソフトウェアのスクリプトの修正といった一連の作業をすべて行わせている．

話せば変わる GUI：ユーザの不満を反映した自然言語処理による GUI 自動修正システム

Lenticular lenses exhibit the color changing effect depending on the viewing angle and the vanishing effect in certain directions. In this study, we propose two fabrication methods for edible lenticular lenses. One is the mold forming method, and another is the knife cutting method using a knife with the inverse structure of a lenticular lens created by an SLA 3D printer. We also evaluate the properties of the end products. The IOR of material is optimized by using ray tracing simulation.

ACM SIGGRAPH 2023 Posters

Fabrication of Edible lenticular lens

Although the mouse cursor can enter the notch area at the top of the MacBook Pro (2021) display, it is partially or entirely hidden by the notch. Avoiding the notch or moving the cursor carefully around the notch can increase the movement time. In this study, we conducted a series of experiments to evaluate the effect of the notch on the movement of the mouse cursor. Experiment 1 showed that the notch increased the pointing movement time in specific situations. Experiment 2 showed that it is better to avoid the notch than enter the notch in the current specification of the notch. Experiment 3 showed that changing the notch to an area where the cursor cannot enter is an effective way of pointing at the target more rapidly and accurately, if the target is adjacent to the notch. Consequently, the outer edge of the notch stops the cursor, resulting in faster and more accurate target-pointing. Therefore, the notch should be an area where the cursor cannot enter.

Proceedings of Graphics Interface 2023

Effect of the Notch a Cursor Cannot Enter for Pointing Movement Time

Although the mouse cursor can enter the notch of the MacBook Pro (2021), it is partially or entirely hidden by the notch. Moving the cursor around the notch or avoiding it entirely can increase the movement time. This study investigated the possibility of using a cursor warping to the left and right of the notch to shorten the path to the target and restrain the movement time increased by the notch. We conducted an experiment to compare the performance of a default cursor, a cursor twice the default size, and a cursor warping to the left and right of the notch. The results showed that a cursor warping left and right of the notch was not effective in terms of the movement time.

CHI EA '23: Extended Abstracts of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems

Effect of a Cursor Warping Left and Right of the Notch

In typical experiments to evaluate novel pointing-facilitation techniques, participants are asked to perform a task as rapidly and accurately as possible. However, the balance can differ among participants, and the techniques’ effectiveness would change if the majority of participants give weight to either speed or accuracy. We investigated the effects of three subjective biases (emphasizing speed, neutral, and emphasizing accuracy) on the evaluation results of pointing-facilitation techniques, namely Bubble Cursor and Bayesian Touch Criterion (BTC). The results indicate that Bubble Cursor outperformed the baseline in terms of movement time and error rate under all bias conditions, while BTC underperformed a simpler target-prediction technique, which was an inconsistent outcome to the original study. Examining multiple biases enables researchers to discuss the (dis)advantages of novel or existing techniques more precisely, which can be beneficial to reach a more reliable conclusion.

CHI '23: Proceedings of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems

Varying Subjective Speed-accuracy Biases to Evaluate the Generalizability of Experimental Conclusions on Pointing-facilitation Techniques

In pointing, throughput TP is used as a performance metric for the input device and operator. Based on the calculation of effective parameters (width We and amplitude Ae), TP should be independent of the speed-accuracy tradeoff. To examine the validity of TP and effective parameters for crossing actions, we conducted two experiments using two established crossing tasks. Our results demonstrate that applying effective parameters to Fitts’ law model improves the fit to the data for mixed biases in both tasks. Besides, we observed that effective parameters smoothed TPs across biases. However, unlike pointing, TP was observed to be unstable across IDs in one task, while was stable across IDs in the other task. Analyzing speed profiles showed that this was likely due to the fact that one of the tasks could be completed with a ballistic movement at low IDs, whereas this was impossible for the other task.

Throughput and Effective Parameters in Crossing

「VR 酔い」はオプティカルフローによって発生することが知られている．対策として，画面の一部を覆い隠す視野制限手法が用いられている．これまで，視野角の範囲を狭める手法や，円形視野を移動させオプティカルフローの大きい箇所を覆い隠す手法が存在する．本稿では，オプティカルフローが大きい箇所をより的確に覆い隠すため，非円形に視野を制限するシステムを開発した．さらに，ユーザ実験を行った結果，VR 酔いの軽減と，従来手法と比較して空間探索能力の向上が見られた．一方，視野形状の変化が一部ユーザの臨場感を損なうことが示唆された．

オプティカルフローに応じた非円形視野制限によるVR酔い軽減手法

百貨店の香水売り場等ではアロマサイネージシステムが導入され，香りの広告・宣伝に用いられている．本稿では空中ハンドジェスチャで操作するアロマサイネージシステムAroMotionを構築・提案する．左右に扇ぐ動作で香りを切り替え，手前に扇ぐ動作で香りを射出する．ユーザの手で生み出される気流の効果により，切り替え時の消臭が早まることはもちろんのこと，香りが到達するまでの遅延も有意に短縮されていることを評価実験で確認した．

インタラクション2023

AroMotion: 空中ジェスチャ操作のアロマサイネージシステム

新しいポインティング手法を評価する際，実験では通例「できるだけ速く正確に」タスクを行うよう教示する．本稿では複数のバイアスが，既存のポインティング手法であるBubble CursorとBayesian Touch Criterionの評価結果に与える影響を検証した．結果，前者は全バイアス条件でベースライン手法の性能を上回ったが，後者はより単純なターゲット予測手法の性能も下回り，元の論文とは異なる結果となった．このように複数のバイアスを調査することで，手法の特性をより正確に議論し，一般化可能性の高い結論を得ることができる．本稿では複数の主観的なバイアスを実験条件に加えることが望ましいと提言する．

インタラクション2023論文集

即興演奏初心者は単調なリズムを繰り返す傾向があり，リズムの発想に関して課題がある．そこで，即興演奏初心者が多様なリズムを思いつけるようになるためのシステムを提案する．提案システムでは，システムとユーザが交互に旋律を奏で合う，この掛け合いの中でシステムは，ユーザの演奏のリズムをアレンジした旋律を返す．システムの演奏に触発され，ユーザの思いつくリズムのバリエーションが増加する.

即興演奏初心者のための多様なリズム発想支援システム

本稿は，Jinhaらによって提案された，二次元操作と三次元操作を融合させたシステムSpaceTopの改良を試みたものである．SpaceTopは透過型有機ELを用いた高価なシステムであり，同種のシステムを構築・検証することが難しい．また，壁や天井に深度カメラなどの装置を設置する大掛かりなシステムであるため，通常使うパーソナルコンピュータとしての用途を開拓しづらかった．本稿で提案するLaptop SpaceTopは，SpaceTopを安価に実現するとともに，ノートパソコンのように折りたたんで持ち運べ，バッテリー駆動で使用できるように改良した．

Laptop SpaceTop：二次元・三次元の融合操作を実現する折りたたみモバイルPC

In a previous study by the authors, we designed an electrical stimulation waveform suitable for enhancing the saltiness of low-sodium foods. This waveform was a combination of cathodal and anodal stimulation. It was also shown that the saltiness enhancing effect of this waveform was effective in salt reduction. On the other hand, monosodium glutamate, which presents as Umami, is also a target for salt reduction. Therefore, this study investigated the effect of this waveform on the Umami presented by monosodium glutamate. The results suggested that this waveform is effective in enhancing Umami presented by monosodium glutamate.

第3回神経刺激インタフェース研究会

減塩食品の塩味を強める電気味覚波形がうま味に与える影響

輝度を変化させた静止画の連続によって，一方向に無限に移動しているように知覚させる運動錯視が存在する．この運動錯視を用いることで，言語によらない直感的な選択を行えるようなUIのデザインが可能になる．一方，SSVEP ベースの BCI に向けたUIをデザインする際，一定周期で明滅を繰り返すフリッカ刺激をターゲットとして用いる．このような UI では，フリッカ以外のアニメーションを各ターゲットに付与できないため，リッチな UI のデザインが困難になる．そこで，輝度変化による運動錯視に注目した．この運動錯視は輝度を反転させるため，一定周期をもつフリッカ刺激とみなすことができる．そのため，SSVEP ベースの BCI 向け UI に導入することができれば，UI デザインの質を高めることが可能になる．本研究では，輝度変化による運動錯視を BCI 向けのUIに導入した場合，UI としての機能性を保証することができるか調査した．実験では異なる周波数を持つ運動刺激に対する識別精度を測定し，その結果，最大で 80% 以上の精度で識別可能であることがわかった．

輝度変化による運動錯視を用いたSSVEPベースBCI

MacBook Pro（2021）画面上部のノッチ領域にカーソルが進入した場合，カーソルの一部や全体が隠れてしまう．この影響でノッチが操作時間を増加させることを著者らは先行研究で明らかにした．本稿では，ノッチの左右でワープするカーソルを用いることで，ターゲットまでの経路を短縮し，ノッチが増加させる操作時間を抑制できないか検証した．また，ノッチにカーソルの全体が隠れない，デフォルトサイズの 2 倍のカーソルとの比較も行った．結果，ノッチの左右でワープするカーソルの有効性は示されず，デフォルトサイズの 2 倍のカーソルを用いることが操作時間の観点において望ましいことがわかった．

ノッチの左右でワープするカーソルの効果の検証

ポインティングを行うとき，ユーザの目的は「ターゲットの選択」である．しかし，ターゲット内でカーソルを止めるためにカーソルの微細な操作を要求され，ユーザは目的と関係のない負担を強いられる．これは，カーソルがターゲット上に留まらず，ディスプレイ上を自由に移動できてしまうからである．また，ユーザが意識的に微細な操作を行うため，操作時間が基本的に人間の反応時間以上かかってしまう．本稿では，カーソル進入不可領域をディスプレイ上に設けることでカーソルの移動を制限し，ユーザの負担を削減するとともに，反応時間未満でポインティングを行わせるビジョンを描く．まず，カーソル進入不可領域を任意に配置できるシステムを試作した．試作システムを用いることで反応時間より短い時間でポインティングできる条件があることを実験において示した．また，多角形ディスプレイや多角形メニュー，画面端に凹凸を設けたディスプレイによる，反応時間未満でのポインティングの可能性を検討した．

第30回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ (WISS2022) 論文集

カーソル進入不可領域による反応時間未満でのポインティング

味センサで測定した値に基づいて味溶液を噴霧混合する TTTV / TTTV2 は,噴霧対象を飲食物にすることで調味機構となりうる.本稿では,調理家電と組み合わせやすいように単純化・小型化・軽量化・低コスト化し,さらにオープンソースハードウェアとして公開する準備も行っている.提案システム Open-TTTV は固体・液体への噴霧が可能で,焼き鳥器やオーブントースターなどの調理家電と合わせられる他,3D フードプリンタと組み合わせることで,積層前のマテリアルに対する調味も行える.

第30回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ(WISS2022)予稿集

Open-TTTV:調理家電に調味機構を付加するオープンソースハードウェア

認知シャッフル睡眠法は,ランダムな単語の映像を数秒おきに思い浮かべる睡眠法である.日本語で対象の単語を読み上げる動画やアプリも複数存在する.しかし,その単語や読み上げる順序は,制約こそあっても明確に決まってはいない.また,毎回同じ単語や順序では効果が薄れるといわれている.本稿では,認知シャッフル睡眠法に基づく単語選出と読み上げを行うことで,入眠支援を行うシステムを提案する.今後はシステムを用いた入眠を行う実験を通じて,有用性を検証する.

日本語での認知シャッフル睡眠法を用いた入眠支援システムの提案

本稿では，AI の文章生成言語モデルによって論文の概要から「不採択コメント」を生成し，それに学生と教員が一緒に向き合うことによる研究指導を提案する．実装したシステムは Slack Bot であり，文末に「なーんてな」といった言葉を追加することによって表現の威圧感を緩和して，実際に学生が読んだときの精神的なダメージを低減する．動作テストでは，10 の不採択コメントで役に立っ たと思える点があるものは７つで，中には新しいアイデアまで提供するものがあった．これを実際に 当研究室での研究指導に活用する計画である．

 AIが生成する不採択コメントを用いた研究指導

本稿では,音楽鑑賞やテレビ視聴などの飲食を伴う行為をより豊かにすることを目的とし,多様なコンテンツと同期して味覚を変化させるロリポップ型の電気味覚提示デバイスを試作した.コンテンツの例として音楽を取り上げ,曲と同期した味覚制御システムを実装し,4 種類の塩飴を用いた効果の検証を行った.その結果,曲の盛り上がりに合わせて電気味覚による塩味や酸味の増強,味の対比効果による甘味の増強が確認できた.これにより,ユーザの感情や行為と関連付けたライブ性のある味覚変化を実現できることが示唆された.本システムは,音楽の他にもゲームなどに応用することで,アイテムやキャラクターとの距離に応じて味を制御することも可能だと考えられる.

Electric Lollipop：多様なコンテンツと同期して塩飴の味を制御する電気味覚キャンディ

楽譜やピアノロールは時間と音高が直交する二次元ユークリッド空間であり,それらの循環構造を生かした音楽が存在する.クロマはオクターブの中で分類される音の相対的な位置を表し,音高が1オクターブ変化するごとにクロマが循環する.また,短い旋律をループさせる,時間的な循環を主体としたミニマルミュージックという音楽形態が存在する.本研究では,旋律とクロマの循環を効果的に表現した記譜法を提案することで,新たな音楽表現を生み出すことを目的とする.そこで,トーラス面とシェパードトーンを利用し,旋律とクロマが循環する楽曲制作システムを試作した.トーラスの構造を利用することで,循環するクロマと時間を縦方向と横方向に表現して楽曲を制作することが可能となった.またシェパードトーンを用いることで,12 音で無限音階をはじめとしたオクターブ間の上昇や下降を含む楽曲の制作を可能にした.本稿では,このシステムがもたらす楽曲制作における新たな表現の可能性について考察する.

時間とクロマが循環する音楽をトーラス面上で制作するシステム

レンチキュラレンズは薄いシートの上に微細なシリンドリカルレンズが並んだ構造をしている.筆者らはこれまでに寒天を素材とした可食レンチキュラレンズ造形手法を提案した.これによりゼリー表面を加工することで,可食素材に光学特性を付与できることが分かった.本稿では,表面にレンチキュラ構造を持った立方体のゼリーを造形することで,特定方向に長い物体の視認を難しくする可食光学迷彩を提案する.シリンドリカルレンズの屈折の働きにより,特定方向の物体を見えにくくすることで実現される.本手法によって,透過性を保ちながら,本来は見えるはずの中身が見えないゼリー等のデザートを作ることができ,新たな食体験を生み出すことができる.

Edible camouflage : レンチキュラ構造を利用した可食光学迷彩の提案

本稿では,論文概要を基に言語モデルが生成した質問を提示する AI システムを提案する.学会や研究グループ内で研究発表するとき,事前準備として自ら考えた想定質問を用いることがある.想定質問を用いた発表準備には,予め研究グループの同期や指導教員から質問を集め,本番の質疑応答では想定した質問のみがなされるように期待する文化もある.このような文化では,想定外の質問がなされることがいわば失敗となる.本稿ではそうした集合知的なアプローチですら想定できない質問を集めることこそが発表の意義であると考えた.なぜなら,それこそが研究グループ内で得られない視点だからであり,研究を進めるためのヒントとなるからである.想定外の質問を集めるためには,想定質問に対する回答を全て発表内に含め,想定内の質問はそもそも質問されないようにすることが望ましい.そこで,本稿ではそうした質問を発表準備に活用することを目的とし,論文の概要を基にした質問を AI に生成させるシステムを提案する.

研究概要に基づいて質問を生成する AI システム

MacBook Pro（2021）画面上部のノッチ領域には，カーソルが進入できる．しかし，カーソルの一部や全部が隠れてしまう．この影響でノッチが操作時間を増加させることを，筆者らは先行研究で明らかにした．そして本稿では，ノッチを「カーソルが進入できない領域」とした方が良いと提言する．ノッチの外縁でカーソルが留まるため，ノッチと隣接したターゲットを高速に選択できると考えられるからである．実験 1 では，現行のノッチの仕様で，「ノッチに進入する戦略」よりも「ノッチを回避する戦略」が望ましいことを示した．実験 2 では，ノッチを「カーソルが進入できない領域」に変更した場合，ノッチと隣接するターゲットを速く正確に選択できるようになることを示した．

カーソルが進入できないノッチがポインティングの操作時間に与える影響

本稿では，非接触型のアロマサイネージシステムにおいて「気流への影響」という観点から最適なハンドジェスチャを考察した．例えば，手を横方向に払うジェスチャを行うと，ユーザの前に滞留する空気が横に押しのけられ，反対側から新鮮な空気が入り込み，自然な拡散よりも遙かに速い「消臭」が実現される．よってこのジェスチャは，現在のにおいを消したり，次のにおいに切り替えたりする際の操作への割り当てが適しているといえる．このような考察のもとで，ハンドジェスチャで操作するアロマサイネージシステムを設計・試作した．

気流への影響を考慮した嗅覚ディスプレイ操作ジェスチャ

本稿では、噴霧混合型の味ディスプレイを用い、3名が協力してプレイするビデオゲームを試作した。目標となる味からずれてしまった味を、味覚を頼りに修正していくが、基本五味のうち1味しか選択・操作できない。また1ターン目は味の加算のみ、2ターン目は味の減算のみという制約がある。目標となる味と最終的に出来上がった味の差に基づくスコアを2チームが競い、メンバーの貢献度も算出・可視化される。

味加減：協力して味を増減させることによる味当てゲームの提案

光造形 3D プリンタでの多色表現には，移動する硝子盤やカルーセル方式に動くレジンタンクの使用が提案されてい る．これらの手法では出力サイズの小ささ，機器の高額さ，出力時間が単色造形時よりも長くなる点が課題として挙 げられる．本稿では，安価に大きなサイズの多色造形を実現する方法としてレジンの混合に注目し，グラデーション 表現を行うシステムを試作した．作成したプロトタイプシステムでは単色造形と変わらない時間でグラデーションの 造形物を出力することが可能になった．

光造形３Dプリンタにおけるレジンの混合によるグラデーション表現

ドローンは，搭載デバイスであるカメラやロボットアームによって，空撮をしたり，各種作業を行っ たりと，様々な用途で用いられている．しかし，ドローンの移動を行う操縦と，搭載デバイスの操作の両方 を手に持ったコントローラで行うと，操縦と操作が混同してしまうことがある．そこで本研究は，ドロー ンの操縦と搭載デバイスの操作の混同を減らすことを目的とし，手でカメラを操作し，足でドローンの操 縦を行う UI を提案する．これにより，操縦と操作の混同を減らし，安定したドローン操縦を実現しつつ， カメラ操作を両手で行うことができるようになると考える．

手でカメラ操作し足で操縦するドローンUI

周囲の人へ迷惑をかけず自由な食生活を送るためには，独特の匂いが強く残る食品について，食後の口臭を気にせず味わえるような方法が必要である.本稿では，味覚と嗅覚をそれぞれ口と鼻に分離して提示することで，口臭を気にせずにニンニク料理を食べることができるシステムを提案する.ニンニクの香気成分をヘッドセット型デバイスから鼻に提示しながら，ニンニクの味を再現した無臭の混合溶液を噴霧した食品を食べると，ニンニク料理を食しているのとほぼ同等の体験ながら，原理上口臭がほとんど発生しない.本システムはニンニクに限らず，ネギやニラなど匂いが強く残るあらゆる食品に応用可能である.

エンターテインメントコンピューティングシンポジウム論文誌

ニンニクの口臭を防ぐ味覚及び嗅覚提示システムの提案

本稿では噴霧混合型の味ディスプレイを用い、視聴覚でなく味覚情報を頼りにするビデオゲームを試作した。接近する敵の姿はほぼ見えないが、そのステータスをいち早く味覚で察知でき、それに応じた防御を行う。自らのステータスも味覚情報であり、ゲーム開始時に美味であったものが、敵の攻撃を受けるごとに変化させられていく。プレイヤーはゲーム終了時に自らのステータスを味わい、それが「飴」としての正の報酬になったり、「臥薪嘗胆」を促す負の報酬となったりする。

五味霧中：味覚を頼りに防御するゲームのデザイン

飲食物の温度が変化すると，味覚の感度も変化することが知られている．本研究では，温度が電気味覚による塩味増強効果に与える影響を調査した．その結果，個人差はあるが，いずれの参加者も温度によって塩味増強効果が変化することがわかった．飲食物の温度に応じて変化する電気刺激波形を個人ごとに最適化すれば，これまで以上に効果的な塩味増強を行えることが示唆された．

電気味覚による塩味増強効果の温度影響

レンチキュラレンズを用いると,見る角度によって絵柄を変化させたり,立体感のある絵柄に変化させたりできる.著者らは,寒天を用いてレンチキュラレンズを作ることに部分的に成功した.これにより,見る角度によって色や模様が変わる料理が創作可能となる.このほか本技術が切り拓く可能性について本稿で考察する.

Edible lenticular: 可食レンチキュラレンズがもたらす可能性

本稿では，味覚メディア（味覚センサ・味覚メガネ・味覚ディスプレイ・味覚プリンタ）のビジョンについて整理するとともに，最新事例として飲食物の味と見た目を変える調味家電 TTTV2（Transform The Taste and Visual appearance）を提案する．元飲食物Aと，目標飲食物Bを味覚センサで測定し，味の差（B-A）を算出し，元飲食物Aに基本五味の溶液を噴霧混合することで味を変える．また，可食インクの印刷で見た目を目標飲食物Bに近づける．作例として，エリンギを毒キノコ（ベニテングダケ）と同じ味と見た目にして安全に体験する，牛乳をカニクリームコロッケと同じ味と見た目にして甲殻アレルギーの人でも安全に体験する，といった，従来の食品では実現できない事例で検証を行い，その可能性について示した．

エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2022論文集

TTTV2（Transform The Taste and Visual appearance）： 飲食物の味と見た目を変える調味家電によるテレイート

多くのポインティング手法の評価実験ではできるだけ速く正確にタスクを行うように指示される．速さと正確さはトレードオフの関係にあるため，それぞれにどれだけの重みを置くかは参加者にゆだねられてしまう．例えば，エラーしにくいポインティング手法を提案して評価実験をする場合，正確さに重きを置く参加者が多いと，従来手法との差が出ない可能性がある．本稿では，速さと正確さに対するバイアスがポインティング手法の評価結果へ与える影響を調査した．ニュートラル，速さ重視，正確さ重視の 3 種類のバイアスでポインティングタスクを行う実験を，十字カーソルとバブルカーソルの 2 種類のカーソルで実施した．結果，バイアスとカーソルの間に交互作用がみられ，バイアスが正確さ重視になることでカーソル間のエラー率の差が小さくなることがわかった．このことから，速さと正確さに対するバイアスが評価結果に影響を与える可能性が示唆された．一方で，正確さ重視においてもバブルカーソルの方が十字カーソルよりも有意にエラー率が低く，バブルカーソルはバイアスによらず有効な手法であると示された．ポインティング手法の評価実験において，複数のバイアスを条件に含めてタスクを行うことで，多彩な状況（たとえば，ユーザが確実にエラーをせずにボタンを選択したい状況）を考慮した評価が行えると考えられる．

ポインティング手法の評価実験における速さと正確さへのバイアスが評価結果に与える影響

MacBook Pro（2021）にはディスプレイの上端中央にノッチ（描画が行われない黒い領域）が配置された．デフォルトのカーソルサイズの場合，このノッチとカーソルが重なると，カーソルの全部もしくは一部が隠れてしまう状況が観察された．このような状況下では，ユーザはノッチ内でのカーソルの位置がわからなくなったり，カーソルを見失ってしまったりする可能性がある．それにより，ノッチを回避する経路をとったり，ノッチ付近で慎重に操作したりすることで操作時間が増加するかもしれない．本研究では，画面上端にあるターゲットから，同じく画面上端にある他のターゲットを選択する場合（例えば，メニューバーの「ファイル」項目を選択後，「検索」項目を選択する場合），ノッチが操作時間に与える影響を調査した．結果，本実験条件のうち，ノッチがターゲットの間にある条件では，操作時間が約 11.8% 増加することがわかった．

ノッチがポインティングの操作時間に与える影響

視力が低いとポインティングの際，カーソルやターゲットがぼやけて見える．そのためターゲットを慎重に狙う必要があり，選択までの時間が増加する可能性がある．また，カーソルやターゲットを正確に把握できないため操作ミスも増える可能性がある．本研究では視力が低下した際，パフォーマンスがどの程度低下するのかを調査する．実験では視力の変化を画面のぼかしで代替することで，画面上のターゲットが明瞭に見えない状況を再現した．実験の結果，ぼかしが強いほど操作時間とエラー率が増加することがわかった．また，ターゲットが小さいほど，エラー率に対するぼかしの影響が大きいことがわかった．

視力の低下がポインティングパフォーマンスに及ぼす影響

Electric tastes can present various taste modulation effects using stimulation waveforms. Presenting and stopping cathodal stimulation or presenting anodal stimulation, for example, can enhance the saltiness of foods and drinks. If the taste of low-sodium foods improves because of these effects, it can provide low-sodium dieters with both mental satisfaction and nutritional health benefits. However, no studies on the effect of saltiness enhancement on electric taste in low-sodium dieters have been conducted. In this study, we first designed and investigated a stimulation waveform suitable for saltiness enhancement of low-sodium foods. This stimulation waveform combined the effects of presenting and stopping cathodal stimulation and presenting anodal stimulation and showed a saltier enhancement than the existing waveforms. Next, we conducted an experiment with individuals who were or had been on a low-sodium diet. In this experiment, the effect of saltiness enhancement on the proposed stimulation waveform was investigated using saltwater gel samples with the same saltiness as low-sodium and ordinary foods. The results suggest that presenting the proposed stimulation waveform when eating foods with a 30% reduction in salt content can present a saltiness equivalent to that of ordinary foods. Furthermore, the discomfort caused by electrical stimulation was not severe enough to be a problem for most participants. Finally, assuming the use of electric tastes in daily life, this study attempted to qualitatively analyze the changes in saltiness intensity and flavor of low-sodium miso soup.

Frontiers in Virtual Reality

Design of Electrical Stimulation Waveform for Enhancing Saltiness and Experiment on Low-Sodium Dieters

Windows 10 では画面の左下角にスタートボタンがあったが，Windows 11 では下端中央に変更され た.ターゲットが画面角や画面端に接している場合，誤選択が起きづらく，操作時間は短縮される.ポイ ンティングの操作時間を予測できるモデルは従来から提案されており，画面角，画面端に接する配置それ ぞれにおけるポインティングのパフォーマンスが調査されている.一方で，画面角に接するターゲットと 画面端に接するターゲットのどちらが良い配置となるか，その条件は明らかにされていない.たとえば横 長のディスプレイでは，画面角に接するターゲットは画面端に接するターゲットよりも画面内の各位置か らの平均距離が長く，条件によっては画面端に接するターゲットの方が平均的に速く選択できるかもしれ ない.本研究では，画面角に接するターゲットと画面端に接するターゲットの配置の差が操作時間に与え る影響を調査した.カーソルの存在確率を一様分布と仮定して，操作時間予測モデルから平均操作時間を 求めた.結果，操作時間のみを考慮すれば，ターゲットの大きさがある程度以上(17 インチディスプレイ で 0.94 inches 以上)大きい場合は画面端に接するターゲットに，それ以下では画面角に接するターゲット にすべきであることがわかった.

画面角と画面端のターゲット配置が操作時間に与える影響

減塩食品の味をより濃く感じさせることは,電気味覚研究の到達目標のひとつである.一方,減塩生活者を対象とした,電気味覚による塩味増強効果に関する調査は未だ行われていない.そこで本研究では,減塩を意識した食生活を行っている,あるいは過去に行っていた参加者 36 名(年齢:43 歳-65 歳,減塩継続期間:2 ヶ月-300 ヶ月)を対象に実験を行った.実験では,減塩食品と一般食品を模した食塩水ゲルサンプルを用いて,電気味覚による塩味増強効果を調査した.結果,減塩食品を模した食塩水ゲルサンプルの試食時に電気味覚を提示することで,有意に塩味が強く感じられた.そして,その塩味強度は一般食品を模した食塩水ゲルサンプルと同等であった.また,電気刺激によってもたらされる違和感は,8 割以上の参加者に対し,実用において問題となるようなレベルではないことが判明した.本研究ではさらに,日常生活での電気味覚の活用を想定し,減塩味噌汁の塩味強度や風味の変化について,定性的な分析を試みた.

インタラクション2022

減塩生活者を対象とした電気味覚による塩味増強効果の調査

視覚情報を取得するSSVEPベースのBCIは，コンピュータ画面上で様々な操作ができ，また高速な通信ができることから注目を集めている．SSVEPベースのBCIは刺激の数が少ないほど高い精度が得られることがわかっているが，ターゲットサイズがBCIの制御に与える影響については調べられていない．そこで本研究では，フリッカ刺激をタイル状に並べたBCI用のUIを設計し，刺激の大きさがSSVEPベースのBCIのパフォーマンスに与える影響を調査した．その結果，刺激の数による影響は見られなかったが，刺激の視角が選択時間に影響を与えていることがわかった．また，実験結果をもとにBCIの特性を利用した最適なUIについて考察した．

	鍜治慶亘, 上野新葉, 青山一真, 中村裕美, 宮下芳明
	第27回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ (WISS2019) 論文集

	上野新葉, 青山一真, 中村裕美, 宮下芳明
	第1回神経刺激インタフェース研究会

	上野新葉, 青山一真, 中村裕美, 宮下芳明
	Extended Abstracts of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems

	上野新葉, 青山一真, 中村裕美, 宮下芳明
	第26回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ (WISS2018) 論文集

	上野新葉, 宮下芳明
	第24回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ (WISS2016) 論文集

	上野新葉, 加藤邦拓, 宮下芳明
	Adjunct Proceedings of the 29th Annual Symposium on User Interface Software and Technology

	上野新葉, 加藤邦拓, 宮下芳明
	インタラクション2016論文集